2018年7月15日日曜日

戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際 波頭亮


久しぶりに読み返した。就活時に、某コンサル勤務の人に勧められて読んだ本。




戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際

当時は知識として読んだ程度でしたけど、やはりコンサルファーム出身だけあって、定義付けがシャープ。

戦略の歴史的経緯を軽く踏まえた上で解説しているから、戦略立案の時に、結局「何の観点から考えればいいんだっけ?」という問いにも対応できる。

戦略の条件は、以下である。
必要条件
十分条件
Objective
Actions
Competitive
Integrated
Advantageous
Sustainable
そして、戦略を策定する際には以下の思考プロセスを踏めばよい。

  1. 分析=収斂
  2. 発想=創造
  3. 具体化=制御
また、戦略論の相違は以下。
M.ポーター:競争相手に対する自社の競合優位性をいかに形成し得るかという観点から事業展開活動のパターンを集約したもの(競合優位性)
P.コトラー: 自社の市場におけるPositionという切り口とそのPositionに応じた合理的な戦略類型を整理(市場内のポジション)

Product life cycle: 事業の成長段階という時間の流れに着目し、成長段階毎に一般的に適合的な戦略のタイプを分類(事業の成長段階)

戦略代替案の評価も以下の観点に気をつける。

  1. 効果の大きさ
  2. 必要な経営資源
  3. 有効性の期間
  4. ダウンサイドリスク
上司によく言われるけれども、「戦略のフレームワークを知っているのと使いこなせるには明確な差がある」というのは本当にそう。簡単だからこそ、呼吸できるかのように使いこなせるところまで引き上げる。

2018年7月1日日曜日

影響力の武器[第三版] ロバート・B・チャルディーニ



ついに名著を読破しました。社会心理学における必読書。




改めて、人間は思っている以上に脳の働きに規定されていることを実感します。
"カチ・サー"と呼ばれる自動反応を起こすのが人間で、ダニエル・カーネマンに言わせるとFast thinkingに相当するのでしょう。


手書きメモだけど、ポイントは以下になります。

1) 返報性
2) 一貫性 - 段階的要請法
3) 社会的証明 (不確実性/類似性)- 集合的無知の効果
4) 好意 - 外的魅力/類似性/称賛/接触/連合, ハロー効果
5) 権威 - 権威シンボルへの反応
6) 希少性 - 心理的リアクタンス


2018年6月28日木曜日

運を支配する 桜井 章一/藤田 晋


読了。



運を支配する

まあツキとか運とか実力のうちといわれるけれども、「運」をコントロールするのはとても重要だと思っている。特に20代以降は。なぜなら、人生、他人が敷いたゲームではなく、自分が切り拓くゲームになった瞬間、この「運」が占める割合が大きくなるからだ。

麻雀プロと企業経営者による対話形式で書かれているが、人生もやっぱり勝負所で負けてはいけない。そして、踏ん張り所で踏ん張れるかが、勝負の分かれ目だと。

2018年6月24日日曜日

本当は脳に悪い習慣、やっぱりいい習慣 瀧靖之


読了。



本当は脳に悪い習慣、やっぱりいい習慣



脳の報酬系(ドーパミン)を刺激する習慣が、人間の習得能力を高める。その原動力が好奇心。また、脳の扁桃体が快楽、不快の感情を司る。神経の成長と修復はアミロイドβたんぱくによって成り立つ。


これって結局、「XX先生が好きだから英語が得意だった」「塾のクラスが面白かったから数学の勉強を頑張った」「パパが学者だったから、物理に熱中できた」など、好奇心以外の副作用によって、その分野の習得能力に差がでることを説明している。つまり、好奇心がわかない分野は、1)好奇心が湧く要素と結びつける、2)好奇心以外の快楽の感情を実感できる環境整備をする、に尽きる。


また、以下の分野はストレングスファインダーでも語られていた部分。何かを新しく習得するには、脳の神経細胞を接続させる必要がある。これは、ストレスがかかり、脳のエネルギーを消費するため、年齢を重ねるごとに習得能力が衰えていくメカニズムである。


脳の可塑性:発達段階の神経系が環境に応じて、最適の処理システムを構築するため、ニューロンの回路の処理効率を高め、使われない回路の効率を下げる現象のことをいう。
海馬:ストレスによって、これチゾールなどのストレスホルモンを発生する。これが、神経新生の邪魔をする。


そう思うと、残り数年が勝負なんだろうな。



2018年6月23日土曜日

世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか? ケン・ベイン


読了。

 
世界を変えるエリートは何をどう学んできたのか?


教育ママとかにウケが良さそうなタイトルですね...
ポイントは以下になります。

- 内発的動機に支えられ学習を継続しよう
- 脳には2つのある「スポックの脳(=記憶、思考、判断を担当するシステム)」「ワニの脳(=扁桃体=Fast thinking)」ことを理解しよう(c.f.「喜びの脳」とは、人生における喜びを見出すことであり、これこそが、あらゆる困難をも乗り越える原動力になる。)
- フレームングを用いてリフレーミングを行おう
- 自己効力感を自己との対話を通じて、高めよう
- 反省的判断力を養おう
- 構造化して物事を把握しよう
- 歪んだ自尊心(XX大学卒業だ/YY会社に内定した)はゴミ箱に捨てよう
- 自己への思いやりが創造力を生む
- より高い目標がさらなる高みへ連れていく
- 記憶力を高める効果があるから、積極的に取り組もう
- 読書をしたら、要約をして、それを用いて認識活動を行おう

一番、ぐっときたのは、

- 心を揺さぶるものを見つけよう

2018年6月2日土曜日

人間は、治るようにできている 福田稔


いやー名著きました!!



人間は、治るようにできている


元々外科医だったが、現在は東洋医学の思想を用いて刺絡療法を専門にした福田先生の著作。西洋医学は基本的に部分最適化の思想で治療を行っており、アスピリンの開発から飛躍的に進歩した歴史がある。例えば、抗生物質の開発の歴史がまさにそう。他には、糖尿病に対するインスリン注射、アトピーに対するステロイドなど。

それに対して、人間の身体はもっと複雑かつ繊細にできており、その本来持つ自然治癒力を引き出す、全体最適化の思想が東洋医学。共生する微生物を活かして生きていく、東洋医学の思想が大事。こちらに立つのが、福田先生。そして、これはギリシャ時代から2000年以上の歴史がある。

というわけで、「西洋医学の部分最適思考だけでは、健康は手に入らない」というのが福田先生のポジション。

以下が本文から役に立つ知識になります。


  1. 基本、人間の身体は免疫力によって支えられており、自律神経が免疫力を司っている。その自律神経バランスは、白血球のリンパ球と顆粒球の比率で決まり、35~44%が適切な値。自律神経は交換神経と副交感神経から成り立ち、副交感神経は、女性らしさを生み出すホルモンの司令塔。実際に、女性の血液を見るとリンパ球の比率が男性より3%多い。>この自律神経の乱れがホワイトカラー労働における過労死の原因です。
  2. 顆粒球は体内で細胞を傷つける活性酵素を放出。なお、活性酵素が老化の原因となっている。>活性酵素はストレスとも関係が深い。毎日ストレスなく幸せに生きるのが大事です。
  3. グリチルリン剤(漢方の甘草)は副交感神経を上げる。>甘草の効果の背景はグルチルン剤なんですね。
  4. 姿勢、鼻呼吸、頭寒足熱の生活の重要性が人間の健康を司る。
  5. 腹腔(ふくくう)内には自律神経にかかわる神経業が存在しており、手術をするとそれが傷つき、自律神経が乱れる。つまり、ホルモン療法は免疫障害を生み出す。
  6. 瞑眩によって人は回復する。高熱、皮膚からの毒素の排出を伴うが、人間が持つ本来の治癒力の現れである。なお、この瞑眩は江戸時代から病気の回復傾向として記録されているぐらい自明な現象であった。
  7. 江戸時代の医者 - 海原益軒・水野南北・岡田茂吉・後藤良山(1659~1733)


要は、TVや雑誌、ベストセラー書籍の健康本は、基本クソってわけですね(笑)
ちなみに、芸能人や美容系に敏感な方が、整形手術後、鬱になったり、身体にガタが来る理由が「腹腔内の損傷による、自律神経系の永久的な乱れ」なのは知らなかった。

東洋医学、奥深いですわ。











2018年5月19日土曜日

What I wish I knew when I was 20 Tina Seelig


I have just finished reading for the first time in 2018. (though this book may be a little bit old haha)



What I Wish I Knew When I Was 20


Reading this book, I can get some tips to effectively manage my life by using a conventional wisdom. Also, it made me realize the importance of giving others something without hesitation as someone may know the rule of reciprocity. Reflecting my past two years experience as a business person, there were enormous challenges or difficulties for me to overcome at that time. However, I was lucky to get so many precious experiences which changed my view on life and to somehow find my own way out of mentally and physically stressful environment behind many helps. Since this is my third year in the first company, it is the right time to start thinking how I can help others who are in trouble.

The below paragraphs are what I like.

 Essentially, the goal of this book is to provide a new lens through which to view the obstacles you encounter every day while charting your course into the future. It is designed to give you permission to question conventional wisdom and to revisit the rules around you. There is always be uncertainty at each turn, but armed with the confidence that comes from seeing how others have coped with similar ambiguities, the stress will morph into excitement, and the challenges you face will become opportunities.

 One of the biggest things that people do to get in their own way is to take on way too many responsibilities. This eventually leads to frustration all the way around. Life is a huge buffet of enticing platters of possibilities, but putting too much on your plate just to indigestion. Just like a real buffet, in life you can do it all, just not at the same time. One approach is to pick three proprieties at any one time, knowing that these will change as your life changes.


Hope this review will help you to take it:)



2018年5月5日土曜日

いま生きる階級論 佐藤優



マルクスの資本論を読み解く書籍。古典の威力を思い知らされた。



いま生きる「資本論」 (新潮文庫)

ざっくりまとめると以下な感じ。


資本主義社会は自由と平等を原則に、労働力という商品を自由に売買することで成り立っている。しかし、国家と国民の関係は、自由と平等の原則がイデオロギーによって隠蔽されている(なぜなら、国民には納税の義務がある)。よって、社会という範囲において、資本主義社会は成立している。そして、マルクスによれば、社会は三つの階級に収斂される。(社会のみではなく、国家をも想定した場合は4つの階級)
  • 資本家 (=余剰価値を独占) - 実体資本、擬制資本を抱えている
  • 労働者
  • 地主
  • 《官僚(=国家) 》
マルクスの三位一体の定式とは、資本-利潤/土地-地代/労働-賃金。ここで、労働者に着目すると、(労働者が人的資本を労働市場に投入して生み出す)労働力商品は、消費によってしか生産できない。つまり、労働力商品は欲望と結びついている(イスラムの世界などは宗教と結びついている)。そして、労働力商品の対価として得られる賃金は、消費財、家族を養う費用、イノベーションに伴う自己教育費用(専門教育ではなく基礎教育)が賄える程度に設定されている。こうした商品経済の論理を現在のグローバリゼーションと結びつけると、グローバリゼーションの本質は国家対資本(グローバル)であって、搾取した労働力によって得た富をグローバル(Google,Facebookなどのグローバル企業)が蓄積するのか、国家が奪うのか、といった問題に収斂していく。資本主義社会とは、悲しいかな、労働を搾取しない限り、豊かにはならない世界なのだ。 

 まず、労働者商品。これは、なんとなくピンときますね。だって、PRADAのバッグも、ルブタンの靴も、オーディマ・ピケの腕時計といったブランド品、嗜好品は、欲望を駆り立てずには売れません。広告みても、美人なモデルがお金のかかった綺麗な景色を背景にポーズを決めています。だれかが消費してくれないと、ブランド品の生産側の労働力も不要になる構造なわけです。これは、食品も、住居も、衣服も同様。だから、みんな高級品を買ってドヤれるように企業が協力して仕向けるわけです。そうして、消費のラットレースに組み込まれていきます。
 次に、サラリーマンの賃金。会社の株主総会資料や決算書を読めばわかる通り、多くの場合、負債の返済、株主への還元、将来の収益に向けた設備投資などを経て、最後に従業員に賃金を上げる順番になっています。ほら、「弊社は東京だと、家賃手当が8万あるから福利厚生がいい」とか、「途上国の海外駐在になれば、物価補正の補助金があるから貯金が貯まる」とかいった発言の背景には、結局、最低限の衣食住のお金+多少の嗜好品消費ができる程後の(日本の労働市場を反映した)賃金体系に組み込まれているからにすぎないわけです。そして、多くのサラリーマンはここから抜け出せないからこそ、上記のような少しでも福利厚生にしがみつこうといった発想になるわけです。本書で、佐藤はヘッジファンドのトレーダーやPEファンド勤務のサラリーマンが高給な理由を「賃金ではなく、利潤の一部を得られる職種/ポジションだから」と説明しています。やはりリスクを取った人にはリターンがある資本主義社会の恩恵を受けるならば、サラリーマンであっても、プロフェッショナルサラリーマンでなければならないわけです。


そんな時代の中で、ゆとり世代はしぶとく生きて行く必要があるわけです。
いやー人生考えさせられますね~。


2018年5月3日木曜日

2017-2018年版 図解わかる税金 芥川 靖彦


読了。






2017-2018年版 図解わかる税金

ようやく税金の全体像を掴めました。本当税金高すぎ。賃金は上がらないし、これからサラリーマンの増税時代が来るし、本当ゆとり世代の日本の将来は暗いですね。。。

2018年4月28日土曜日

なぜ投資のプロはサルに負けるのか? 藤沢数希


読了。





なぜ投資のプロはサルに負けるのか?

ファイナンス理論一通り知っていると、あんまり新しい学びはないが、比喩による説明、理論の簡素化は上手い。金融知識がない人が読むには、読みやすい入門書。

「DCF法を現実的にどう活用するか」ではなく、「DCF法を用いた結果がどうであるか」に焦点を当てて説明する点とかがまさにそう。

投資に迷っている方は、とりあえず、投資信託のインデックスファンドを買うのが定石。TOPIX Fundに組み入れられる銘柄やMSCI-Kokusaiなどからスタートするのがいいかと。なお、ボッタくられないように販売手数料(1~2%)と信託報酬(1~3%)も要確認。

2018年3月21日水曜日

埼玉県立浦和高校 人生力を伸ばす浦高の極意 佐藤優/杉山剛士


読了。母校のOBとして買った。


埼玉県立浦和高校 人生力を伸ばす浦高の極意


印象に残った部分は二箇所。
"困難な状況を乗り越える「タフさ」と他者の痛みに共感できる「優しさ」を兼ね備えた人間にならねばならない" 
"世界のどこかを支える人になろう"  

高校に関して残っている印象は、「泥臭く」「地道に」「諦めない」って感じかな。公立男子高っぽい(笑)ただ、他者との比較ではなく、自分の人生を全うするように促す組織風土は良かった。そして、多感な青年期の時期に、挑戦から逃げる/簡単に諦める/正々堂々勝負しない男はダサいといった価値観に触れられたことは貴重な気がする。

いつか講演に呼ばれる器の人を目指して、精進していこ。


2018年3月11日日曜日

知的幸福の技術 自由な人生のための40の物語 橘玲


橘本です。

労働、年金、保険、医療、教育、資産運用などのテーマを40のエッセイにして書き下ろした本。



知的幸福の技術 自由な人生のための40の物語

相変わらず破綻した日本の社会制度に対して辛口なコメントがならぶけれども、人生設計を利己的な個人に立って考えた時に、どのように生きていけばいいのか、一つの解を読者目線で展開してくれる。


印象的な部分を幾ばくか引用すると、

「企業年金の解散が相次ぎ、公的年金は際限のない保険料引上げと給付削減を繰り返している。給与は減り、退職金は廃止され、終身雇用は能力主義と容赦ないリストラにとって代わられた。だが、今も多くの人が時代遅れの設計図にしがみついたままだ。」

「人的資本論を唱えたゲーリー・ベッカーによれば、健康や人間関係も含めた広い意味での人的資本が社会の富の大半を占めている。それに比べたら、貯金の多寡やマイホームの有無にはなんの意味もない。
 裕福な資産家は別として、ほとんどの人は人的資本を上回る実物資産をもつことはない。ならばわずかな貯金を殖やそうと苦心惨憺するよりも大きな富を生む人的資本にこそ投資をすべきだと、このノーベル経済学者は言う。
 大学院や専門学校で資格を取得したり、語学学校に通うおとが流行している。これを『自分への投資』という。大衆社会では経済理論も大衆化する。
 だが、こうした投資は往々にして無駄に終わることが多い。資格や能力に価値があるのはそれが稀少だからだ。片言の英語が話せるからといって収入が増えるわけではない。弁護士が高給を得られるのは需要に対して人数が少ないからだ。少数の人間が大きな利益を手にする以上、ゲームの参加者の大半は損をしている。」

 「リカードのユートピアでは、国家に限らず、企業でも個人でも誰もが自分の得意分野で、頑張れば全員が幸福になれる。社会は弱肉強食の世界ではなく、人々は自分の得意技を交換しあって豊かになっていく。これはとても美しい理論だ。
 個人の優位を『エッジ』という。誰もが自分のエッジを持っている。人的資本への投資とは、試験でよい点数を取ったり資格の数を増やしたりすることではない。自分だけの刃を研ぎ澄ますことだ。」

「儲かる商売に参入者が少ないのは、それが他者の承認を得られない汚れ仕事とみなされているからだ。欲望という底なしの需要に対して供給が限られれば、当然そこに超過剰利潤が生まれる。違法だから儲かるわけではなく、その背後には経済的な必然がある。」

「他者の承認を得るもっとも簡単で確実な方法は、自分の価値観を他者と同じにすることだ。女子高生の間で流行したルーズソックスのように、成熟した大衆社会では、人々が他人の望むものを手に入れようと行動する。不恰好な靴下は、マイホームやマイカーや学歴や肩書きなど、私たちの社会で価値があるとされるどんなものにも置き換えられる。そこでの個性とは、傍から見ればどうでもいいような微細な差異を競うことだ」

「ところで、あなたの欲望が他人の欲望であり、あなたの幸福が他人の幸福だとすれば、あなたはいったいどこにいるのだろう?豊かな社会では『自分探し』の旅が流行するが、たいていの場合、探すべき自分は最初から存在しない。
 人は誰からも承認されない人生に耐えることはできない。一方で、他人の欲望を生きる人生は破綻を免れないだろう。大衆の欲望は無際限で、渇きは永遠に癒されない。」

「ヘーゲルは、国家という共同体から承認を得ることで人は幸福になれると説いた。ブランドの魅力は価値観を共有する世界規模の消費者共同体に参加できることにある。携帯電話の出会い系サイトが人気を博すのは、実生活では望み得ない承認を仮想空間の共同体が与えてくれるからだろう。忠誠の対象は違っても、誰かに認められたいという人間の行動は変わらない。」


相変わらず、面白い考察だなぁと感心w



2018年2月18日日曜日

史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか グレゴリー・ザッカーマン


金融業界の友達に勧められて読んでた本。
ようやく読了。




史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか

ポールソンは、CDSの取引で莫大な財産を築いた、本書の主人公。ペレグレーニと共に、不動産市場の状況を的確に見抜き、不動産ローンを返済できずに自己破産する低所得者が溢れることに確信を持って、取引を執行しする。ヘッジファンドが何を行っていたのかがわかる。

また、基本的に大損をした投資銀行のトレーダーの中でも、ドイチェバンクのリップマンが如何にして社内の軋轢を超えて、収益を上げる点が刻々と描写されている。サラリーマンならではの境遇が想像できる。

金融知識がなくても包括的にリーマンショックを理解できる、良書。



2018年2月12日月曜日

シェア〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略 レイチェル・ボツマン/ルー・ロジャーズ


結構長かったけれども、なんとか読了!

本書では、コラボ消費について解説していく。これは結構読んでて面白かった。著作は2010年12月と少し古いけど、日本でもようやくコラボ消費が台頭しつつあるので、全然色褪せない内容。




シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

米国の余波が5年ぐらい経って流行るのが日本だから、タイミング的には外れていない。

本書は、共有による価値創出が行われている消費行動を「コラボ消費」と呼び、このトレンドが世界中の数多のサービスに関して分析した上で、次世代の影響力を持つ社会経済変化だと結論づける。

Youtube, eBay, CouchSurfing, SharedEarth, Airbnb, Netflix, Zipcar, Swap.com, Freecycle, OurSwaps, ReUseIt, Zilok, Zopa, thredUP, U-Exchange, Prosper, SolarCity, Gettaround, RelayRiders, MyBo, Skype, Jumo, Meraki, Kickstarter, WordPress, Meetup, Myspace, Kiva, Rentoid, Steelcase, Freecycle, Kashless, Around Again, BarterQuest, UISwap, SCoodle, Toyswap, MakeupAlley, Swap.com, Citizen Space, Hub Culture, Urban Gardenshare, Ithaca Hours, Brooklyn Skilshare, ParkatMyHouse, Roomorama, SmartBike, B-cycle, OYBike, BIXI, Zimride, NuRide, Foursquare, EveryBlock, HearPlanet, Flicker, OpenStreetMap, Citizendium, Bepress, Slashdot, NeuroCommons, Spotify, BabyPlays, Toy Rental Club, erento, iLetYou, LiveWork, .......


そして、「コラボ消費」のシステムに関して以下の3つに分類して、一つ一つ説明していく。
1. プロダクト=サービス・システム(PSS):利用した分だけお金を払うという「所有より利用」のコンセプトを持つサービス、「活用型」と「寿命延長型」の二種類が存在
2. 再配分市場:ソーシャルネットワークをとおして、中古品や私有物を必要とされていない場所から必要とされるところ、また必要とする人に再配分するサービス
3. コラボ的ライフスタイル:同じような目的を持つ人たちが集まり、時間や空間、技術やお金といった目に見えにくい資産を共有するサービス

これらの成功モデルに共通する四つの原則は以下になる。
a) クリティカル・マス*:システムを自律的に維持するために十分なモメンタムがそこにある(*社会学の用語)
b) 余剰キャパシティ
c) 共有資源の尊重
d) 他者への信頼

基本的に上記内容を歴史的系譜をたどりながら解説していく超面白い本です。
以下が個人的メモ。もはや膨大にありすぎるw


歴史的背景
1889年 ノルウェーの経済社会学者ソースティン・ヴィブレンが「衒示的消費**」という概念を提示(**新興階級が富と権力を見せびらかせるために、消費すること)した。
1920~1950年代 ハイパー消費主義(=自閉的資本主義)の台頭。これによって、所有のスタイルには統一感(持ち物の色、スタイル、流行感など)が必要だと思い込まされる。
1950年代 ハイパー消費主義の時代には、集団やコミュニティの価値観よりも、消費者としての自立や「何においてもまず私」という心理が先になる。「自分のものは自分のもの」として完全に自己完結することが究極のゴールという誤ったコンセプトが、あたかも個性と自立の尊重に唱えられたからだ。
1960年代 ハーバード大学公共政策を研究するロバート・D・パットナム教授は、社会資本を強調的な行動を促して社会の効率を上げる信頼、規律、ネットワークと定義した。彼によると、1980年から1993年の間に、社会資本の大幅な減少により、幸福感が著しく現象したことが実証されている。


  • カーロッタ・ペレスの研究:経済の基盤や社会が拠って立つ規範-家庭、仕事、教育システム、政治の仕組み、自由時間の使い方、を一変する破壊的なテクノロジが70年ごとに一度生まれる。
  • オハイオ州立大学の社会心理学者のマリリン・ブリューワーの言葉を借りれば、コラボ消費は「社会的な自分 - つまり、つながりや帰属を求める自分自身の一部」を満たす。コラボ消費は、シェアと交換という本能的で自然な行為がベースになっているのだ。
  • スタンフォード大学の社会学のマーク・グラノヴェッターによると、「弱い紐帯の強み」知らない人同士の社会的関係が個人の生き方を豊かにする。
  • エドワード・バーネイズは、「感情の訴求力」に科学的根拠があると発見した。彼は、フロイトの「精神分析入門」を読破し、人間の深い潜在意識のレベル、とりわけ攻撃性や性的欲求に働きかけることで、消費者の行動を操ることができる、ことに確信したのだ。物を欲しがらせるには、人間の原始的行動パターンー何を崇拝し、何を忌み嫌い、何を愛し、憎しみ、恐るかーと欲求を結びつけなければならない」。
  • 消費心理学教授で消費行動経済学の第一人者である、リチャード・ファインバーグはクレジットカードが消費行動に与える影響を長年研究してきた。「クレジットカードは支払いの感覚を購入の現実から切り離す」ーこの現象をデカップリングと呼ぶ。カーネギーメロン大学の神経学者、ジョージ・ローウェンスタインは指摘する、「クレジットカードが、脳の支払いの苦痛に対して麻痺させるんです」。つまり、依存症や否定的な感情と関係がある島皮質の活動が、クレジットカードの支払いだと見られない。
  • ミシガン大学の政治学教授のロバート・アクセルロッドは続ける。「人は、友情や信頼から助け合うのではなく、関係を続けることが将来自分のためになると信じるからこそ助け合う」ーこれを「未来の影」と呼ぼう。
  • 「トランシューマリズム(=消費者の浮気心」とは、チョイスの多すぎる現代の消費社会の産物として、的を得た表現である。
  • コラボ的サービスシステムと呼ぶものを四つの重要なデザインの要素に分ける。それは、利用の円滑さ、サービスの複製可能性、アクセスの多様性、コミュニケーションの強化。
  • コミュニティのために役立つことをすれば、それによって自分の社会的な価値が高まることを知っている。そして、ネットワーク効果はインターネットの発展によって加速された。インターネットを含むSNSの台頭によって、仲介者不在の世界になりつつある。「親しみがわき信頼が築かれるような適切なツールと環境をつくり、ビジネスとコミュニティが出会う場所を提供すること」が仲介者の役割だったが、これをサービス受益者同士が監視できるシステムにすることによって、不必要になるわけだ。
  • 社会的承認を求めるには、わけがある。それは原始的な本能であり、他人の行動やふるまいを真似て決断することで、認知に要するコストを節約できるからだ。
  • 実は、デザイン的思考とコラボ消費は似ている。デザイナーは、消費者や企業のニーズと社会全体の利益の間の健全なバランスを見つけるという役目を担うようになりつつあるのだ。なぜなら、デザインは「創造」から「思考」へと大きく飛躍した。デザイン的思考とは、人為的な創造のプロセスをシステムや経験を使うことで、一つひとつ別々の製品についてではなく、もっと大きな問題の解決に応用するという意味になっている。
  • ニール・ローソンが著作、"All Consuming"で「消費づけることで、ますます消費者以外の何ものにもなれなくなる」と指摘したように、人生でものを溜め込むことに時間と空間を使えば、その分だけ他者のために使う余裕がなくなる。物質的豊かさの追求は、人間のもっとも基本的な社会的欲求、つまり家族や地域の絆、個人の情熱、社会的責任と本質的に相反する。
  • もの(それ自体)よりも、それによって満たされるニーズや経験を求めている。オンライン上の自分のブランドが自分が誰か、何が好きかを定義するようになると、実際に所有するよりも、利用していることやつながりがあることを見せる方が大切になる。その動向の一つが、「サービス・エンヴィー」と呼ばれるサービスだ。それを利用することがステータスとなるようなサービスのことを指す。利用しているサービスをとおして自分がどんな人間かを相手に表現できるようなサービスであるがゆえに、自己表現欲求を満たせるのだ。
  • 人々が協力をしてプロジェクトや特定のニーズにあたれるような適切なツールを持ち、お互いを監視し合う権利を上手に管理できれば、コモナー(共有者)は共有資源を自己管理できる。これにて、共有地の悲劇を避けることができるのだ。人間関係と社会資本がもう一度取引の中心になったことで、他者との信頼を築いたり維持するのがより簡単で、ほとんどの場合において、信頼が逆に強化される。



なお、著者のHPは以下にあります。
Rachel Botsman HP
https://rachelbotsman.com

2018年2月10日土曜日

不幸になる生き方 勝間和代


読了。

昔、「カツマー」と呼ばれる女性層を生み出したぐらい有名な勝間和代著作。

文体は読み易い。
本書を要約すると、以下になる。

日本社会は他責の人を生み出す教育システム、宗教観、社会構造になっているから、なかなか幸せになりにくい。しかし、世の中には幸福になるための要素は明らかになっている。その中で、幸福と相関関係のある「裁量権の自由(人生のコントロール権)*」と呼ばれる要素が日本は弱い。ゆえに、以下の法則に注意して、人生を過ごすべし。

  1. 有責の法則
  2. 双曲の法則
  3. 分散の法則
  4. 応報の法則
  5. 稼働の法則
  6. 内発の法則
  7. 利他の法則



「根拠に基づく自己肯定感を持っているか」が幸福か不幸を分ける境目らしく、子育てにおいては、それを育めるよう教育するのが一つの方向性になるかもしれません。日本人は「労働一神教の下で生きている」という表現は的を得ていると思いました。


*詳しくは、大阪大学経済学教授による論文「なぜあなたは不幸なのか」を参照。
http://www.iser.osaka-u.ac.jp/rcbe/gyoseki/fukou.pdf




ちなみに、本書の「幸福のペンタゴンモデル」に関して詳細説明があるのは、以下の書籍。社会学の山田教授と電通チームハピネスとの共同本。


Hooked: How to Build Habit-Forming Products

This book was written almost 10 years ago. Yet it still prevailed his concepts well implemented into a lot of successful products. Based on ...