2018年2月12日月曜日

シェア〈共有〉からビジネスを生みだす新戦略 レイチェル・ボツマン/ルー・ロジャーズ


結構長かったけれども、なんとか読了!

本書では、コラボ消費について解説していく。これは結構読んでて面白かった。著作は2010年12月と少し古いけど、日本でもようやくコラボ消費が台頭しつつあるので、全然色褪せない内容。




シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略

米国の余波が5年ぐらい経って流行るのが日本だから、タイミング的には外れていない。

本書は、共有による価値創出が行われている消費行動を「コラボ消費」と呼び、このトレンドが世界中の数多のサービスに関して分析した上で、次世代の影響力を持つ社会経済変化だと結論づける。

Youtube, eBay, CouchSurfing, SharedEarth, Airbnb, Netflix, Zipcar, Swap.com, Freecycle, OurSwaps, ReUseIt, Zilok, Zopa, thredUP, U-Exchange, Prosper, SolarCity, Gettaround, RelayRiders, MyBo, Skype, Jumo, Meraki, Kickstarter, WordPress, Meetup, Myspace, Kiva, Rentoid, Steelcase, Freecycle, Kashless, Around Again, BarterQuest, UISwap, SCoodle, Toyswap, MakeupAlley, Swap.com, Citizen Space, Hub Culture, Urban Gardenshare, Ithaca Hours, Brooklyn Skilshare, ParkatMyHouse, Roomorama, SmartBike, B-cycle, OYBike, BIXI, Zimride, NuRide, Foursquare, EveryBlock, HearPlanet, Flicker, OpenStreetMap, Citizendium, Bepress, Slashdot, NeuroCommons, Spotify, BabyPlays, Toy Rental Club, erento, iLetYou, LiveWork, .......


そして、「コラボ消費」のシステムに関して以下の3つに分類して、一つ一つ説明していく。
1. プロダクト=サービス・システム(PSS):利用した分だけお金を払うという「所有より利用」のコンセプトを持つサービス、「活用型」と「寿命延長型」の二種類が存在
2. 再配分市場:ソーシャルネットワークをとおして、中古品や私有物を必要とされていない場所から必要とされるところ、また必要とする人に再配分するサービス
3. コラボ的ライフスタイル:同じような目的を持つ人たちが集まり、時間や空間、技術やお金といった目に見えにくい資産を共有するサービス

これらの成功モデルに共通する四つの原則は以下になる。
a) クリティカル・マス*:システムを自律的に維持するために十分なモメンタムがそこにある(*社会学の用語)
b) 余剰キャパシティ
c) 共有資源の尊重
d) 他者への信頼

基本的に上記内容を歴史的系譜をたどりながら解説していく超面白い本です。
以下が個人的メモ。もはや膨大にありすぎるw


歴史的背景
1889年 ノルウェーの経済社会学者ソースティン・ヴィブレンが「衒示的消費**」という概念を提示(**新興階級が富と権力を見せびらかせるために、消費すること)した。
1920~1950年代 ハイパー消費主義(=自閉的資本主義)の台頭。これによって、所有のスタイルには統一感(持ち物の色、スタイル、流行感など)が必要だと思い込まされる。
1950年代 ハイパー消費主義の時代には、集団やコミュニティの価値観よりも、消費者としての自立や「何においてもまず私」という心理が先になる。「自分のものは自分のもの」として完全に自己完結することが究極のゴールという誤ったコンセプトが、あたかも個性と自立の尊重に唱えられたからだ。
1960年代 ハーバード大学公共政策を研究するロバート・D・パットナム教授は、社会資本を強調的な行動を促して社会の効率を上げる信頼、規律、ネットワークと定義した。彼によると、1980年から1993年の間に、社会資本の大幅な減少により、幸福感が著しく現象したことが実証されている。


  • カーロッタ・ペレスの研究:経済の基盤や社会が拠って立つ規範-家庭、仕事、教育システム、政治の仕組み、自由時間の使い方、を一変する破壊的なテクノロジが70年ごとに一度生まれる。
  • オハイオ州立大学の社会心理学者のマリリン・ブリューワーの言葉を借りれば、コラボ消費は「社会的な自分 - つまり、つながりや帰属を求める自分自身の一部」を満たす。コラボ消費は、シェアと交換という本能的で自然な行為がベースになっているのだ。
  • スタンフォード大学の社会学のマーク・グラノヴェッターによると、「弱い紐帯の強み」知らない人同士の社会的関係が個人の生き方を豊かにする。
  • エドワード・バーネイズは、「感情の訴求力」に科学的根拠があると発見した。彼は、フロイトの「精神分析入門」を読破し、人間の深い潜在意識のレベル、とりわけ攻撃性や性的欲求に働きかけることで、消費者の行動を操ることができる、ことに確信したのだ。物を欲しがらせるには、人間の原始的行動パターンー何を崇拝し、何を忌み嫌い、何を愛し、憎しみ、恐るかーと欲求を結びつけなければならない」。
  • 消費心理学教授で消費行動経済学の第一人者である、リチャード・ファインバーグはクレジットカードが消費行動に与える影響を長年研究してきた。「クレジットカードは支払いの感覚を購入の現実から切り離す」ーこの現象をデカップリングと呼ぶ。カーネギーメロン大学の神経学者、ジョージ・ローウェンスタインは指摘する、「クレジットカードが、脳の支払いの苦痛に対して麻痺させるんです」。つまり、依存症や否定的な感情と関係がある島皮質の活動が、クレジットカードの支払いだと見られない。
  • ミシガン大学の政治学教授のロバート・アクセルロッドは続ける。「人は、友情や信頼から助け合うのではなく、関係を続けることが将来自分のためになると信じるからこそ助け合う」ーこれを「未来の影」と呼ぼう。
  • 「トランシューマリズム(=消費者の浮気心」とは、チョイスの多すぎる現代の消費社会の産物として、的を得た表現である。
  • コラボ的サービスシステムと呼ぶものを四つの重要なデザインの要素に分ける。それは、利用の円滑さ、サービスの複製可能性、アクセスの多様性、コミュニケーションの強化。
  • コミュニティのために役立つことをすれば、それによって自分の社会的な価値が高まることを知っている。そして、ネットワーク効果はインターネットの発展によって加速された。インターネットを含むSNSの台頭によって、仲介者不在の世界になりつつある。「親しみがわき信頼が築かれるような適切なツールと環境をつくり、ビジネスとコミュニティが出会う場所を提供すること」が仲介者の役割だったが、これをサービス受益者同士が監視できるシステムにすることによって、不必要になるわけだ。
  • 社会的承認を求めるには、わけがある。それは原始的な本能であり、他人の行動やふるまいを真似て決断することで、認知に要するコストを節約できるからだ。
  • 実は、デザイン的思考とコラボ消費は似ている。デザイナーは、消費者や企業のニーズと社会全体の利益の間の健全なバランスを見つけるという役目を担うようになりつつあるのだ。なぜなら、デザインは「創造」から「思考」へと大きく飛躍した。デザイン的思考とは、人為的な創造のプロセスをシステムや経験を使うことで、一つひとつ別々の製品についてではなく、もっと大きな問題の解決に応用するという意味になっている。
  • ニール・ローソンが著作、"All Consuming"で「消費づけることで、ますます消費者以外の何ものにもなれなくなる」と指摘したように、人生でものを溜め込むことに時間と空間を使えば、その分だけ他者のために使う余裕がなくなる。物質的豊かさの追求は、人間のもっとも基本的な社会的欲求、つまり家族や地域の絆、個人の情熱、社会的責任と本質的に相反する。
  • もの(それ自体)よりも、それによって満たされるニーズや経験を求めている。オンライン上の自分のブランドが自分が誰か、何が好きかを定義するようになると、実際に所有するよりも、利用していることやつながりがあることを見せる方が大切になる。その動向の一つが、「サービス・エンヴィー」と呼ばれるサービスだ。それを利用することがステータスとなるようなサービスのことを指す。利用しているサービスをとおして自分がどんな人間かを相手に表現できるようなサービスであるがゆえに、自己表現欲求を満たせるのだ。
  • 人々が協力をしてプロジェクトや特定のニーズにあたれるような適切なツールを持ち、お互いを監視し合う権利を上手に管理できれば、コモナー(共有者)は共有資源を自己管理できる。これにて、共有地の悲劇を避けることができるのだ。人間関係と社会資本がもう一度取引の中心になったことで、他者との信頼を築いたり維持するのがより簡単で、ほとんどの場合において、信頼が逆に強化される。



なお、著者のHPは以下にあります。
Rachel Botsman HP
https://rachelbotsman.com

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