2021年2月28日日曜日

こころを動かすマーケティング―コカ・コーラのブランド価値はこうしてつくられる 魚谷雅彦


今は資生堂の社長の魚谷さんがコカコーラ日本法人社長になった時に書いた書籍(ちなみに、P&G先輩が好む書籍にもランクインしてくる)。

ブランドマーケティングの話がメインだが、個人的にはクラフト・ハインツの日本法人を経験したのがキャリアの転機な気がして経緯が気になる。ライオンを辞めた転職先がCiti銀行(たぶん投資銀行部門)だった点は知らなかった。Wikipediaでも明記されていないが、自叙伝では上手くいかなかった旨(根本的な思考が合わなかった点)が数行で語られていた。そこから、クラフト・ハインツの転職オファーを頂いたという巡り合わせ。うまくいかなった時に、阪急グループ創設者である小林さんの言葉に奮起した話も印象深かった。


マーケティングの内容に触れておくと、コカ・コーラのブランディングは、機能であるExtrinsic valueを変えていけないから、時代に応じて如何にIntrinsic valueと称される感情的便益をどう伸ばしていくかがマーケティングの課題となり、それを実行していくことが求められる。


2021年2月26日金曜日

図解実践マーケティング戦略 佐藤義典


なぜか戦略コンサルタントがお勧めする書籍として取り上げられる本書。スモールビジネスをする人にとっては確かに実用性が高いのかもしれない。筆者はWharton MBA取ってから外資系でマーケテイングに従事した後、独立している。




  • Segmentationを絞ってNo.1を取る
  • あなたのSegmentationを評価する顧客
  • Selling message
    • Strategic
    • Impressive
  • 具体的な方法は、広告の製品名を他社製品と入れ替えてみる。その際に、言い換え可能な場合は、独自性がないため良いSelling messageとは言えない。
  • 差別化=顧客の頭の中で決めること
  • コトラーによると以下の理由から、Simplicity/Impressiveness/Relevencyの3点を網羅した情報でなければならない
    • 選択注意
    • 選択的歪曲
    • 選択的記憶
  • Benefit=Function+Emotion
  • マインドフロー=客から見て、あなたのIssueがどこにあるのか。客がどこで立ち止まっているかを体型的に考えていく手法。
  • 結局、本書の売りであるマーケティングノウハウは以下に集約される。
    • Strategic BASiCS
    • Product flow
    • The depth/width of needs (ニーズの構造を捉える)
    • Mind flow
    • 売上5原則
  • ニーズを広げる時のSelling Lineは地獄型、かつ、不安訴求の方がうまくいくケースが多い
    • Fear:こんなにまずいことになりますよ?
    • Uncertainty:よくわからない将来に備えませんか?
    • Doubt:それ本当に効果ありますか?
  • ニーズを広げる時のSelling Lineが天国型、かつ、バラ色の世界を見せる方が浸透までに時間がかかる

2021年2月21日日曜日

もっと言ってはいけない 橘玲

現代の遺伝学が明らかにしつつあるのは、「どんなに努力してもどうしようもないことがある」という現実である。そして、リベラルな社会になればなるほど、それが剥き出しに現れる。それを様々なFactを用いながら、現代の大衆メディアに支配されている言論に一石を投じる内容になっている。個人的には、肌感覚と合っている。日本の労働社会がグローバル化しない本質は、グローバル化が進むことで多くの人(労働者)が不幸になることを直感的にわかっている点と自己社畜されることで幸福を感じる遺伝子によって不合理を受け入れる民族である点が絡まっているからだろう。複雑怪奇な労働環境もほぼこれで説明ができる。



行動遺伝学によると、一般知能(IQ)の遺伝率は77%で極めて高い。

リベラルな社会では、「個人の努力ではどうしようもないもの(運命)」を理由にした差別は許されない。これは人種だけでなく、民族・国籍・身分・出自・性別・性的嗜好・障害なども同じである。

アイデンティティは「社会的な私」の核心にあるものd、徹底的に社会的な動物であるヒトにとって、それを否定されることは身体的な攻撃と同じ恐怖や痛みをもたらす。人類が進化の大半を過ごした旧石器時代の狩猟採集生活では、集団(仲間)から排除されることは直ちに「死」を意味した。自己は社会=共同体に埋め込まれているのだ。〜中略〜世界を「俺たち(善)」と「奴ら(悪)」に分割し、善悪二元論で理解しようとするのは、それが一番わかりやすいからだ。

世界を複雑なものとして受け入れることや、自分が「悪」で相手が「善」かもしれない可能性を疑うことは、この単純な世界観を激しく同様させる。それは、陳腐で平板な世界でしか生きられない人たちにとってものすごく不安なことなのだろう。現代社会を蝕む病は、脆弱なアイデンティティしかもてなくなった人たちがますます増えていることだ。彼らは名目上はマジョリティだが実体は「社会的弱者」で、だからこそ自分より弱いマイノリティに激しい憎悪を向ける。

知識社会とは、その定義上、高い知能をもつ物が社会的・経済的に成功する社会のことだ。そう考えれば、知識社会における経済格差とは「知能の格差」の別の名前でしかない。「知能」の問題から目を背けて、私たちがどのような世界に生きているのかを理解することはできない。

ヒトの脳は、直感的には因果律しか理解できないように作られているため、あらゆる出来事に無意識のうちに原因と結果の関係を探す。これが、自分にとって不愉快な統計的事実を定義と混同死、それを否定するために経験的事実を「ブラックスワン」として持ち出すいちばんの理由である。

私(人格)=遺伝+環境(共有環境-非共有環境[友達関係])

ノルウェーの双子データによると、環境で47%が決まり、遺伝的理由で41%が決まってしまう。


ヘックマンが明らかにしたのは、「0~5歳までの教育投資が重要である」ということであり、認知的スキルは11歳ごろに基盤が決まる点であった。なぜなら、年齢が上がるほど遺伝子による差異が目立つため、どれだけ教育に投資しても効果は薄れてしまうからである。

米国社会におけるアジア系移民の成功を、トマス・ソ・ウェルという黒人経済学者は「日系米国人の経済的成功は、"特別扱い"されなかったからだ」と述べた。

Quiet(ものしずか)の中で、スーザン・ケインはこう述べている。内向性の時代において、50%は遺伝率で決まり、残りの半分は非共有環境(=友達関係)で決まる。

他人の道徳的不正を罰することで快感を覚えるように脳をプログラムしておけば、共同体の全員が「道徳警察」になって相互監視することで秩序維持に必要なコストは劇的にさがる

狩猟採取生活は、人口密度の高い集団生活を余儀なくされた。つまりは、感染症のリスクが高まり、結果として免疫機能の発達につながった。炭水化物を大量摂取しても糖尿病になりにくい体質へと進化した。

ラクトース(乳糖)は元々人間が摂取する成分ではなかった。これは、西アフリカ、ヨーロッパでの牧畜文化から摂取するようになった。それによって、わずか数千年で乳糖不耐性タイプでない人も生まれたのだ。

遺伝が極めて複雑な相互作用で、自然環境ではなく、社会環境との相互作用も含まれるため、現代人とは、遺伝と文化の「共進化」の産物である。

Race Differences in Inteligence(リチャード・リン)によると、PIAAC/PISAでの試験で計測される知能は北東アジアがスコアが高く、SG>香港>中国>韓国>日本>台湾の順位である。

シリコンバレーのベンチャー企業の創業者・経営幹部にアシュケナージが多い。次に目立つのが、インドのバラモン出身(インドの中で極めて知能の高い集団)である。

ネオフォリア(新奇好み)は、リベラルになりやすい。ネオフォビア(新奇嫌い)は、保守派になりやすい。

日本人の下戸は23.9%であり、本州中部に多い。

環境の影響が大くなれば遺伝率は下がり、逆に環境の影響が小さくなれば遺伝立は上がる。つまり、「リベラルな社会ほど遺伝立が上がる」という単純な事実である。だとすれば、「リベラル」な人たちこどが、環境のちがいで人生が決まることのない遺伝率100%の理想世界を目指さなくてはならない。

産業革命以降、私たちは「知識社会」という人類がこれまで体験したことのない全く新しい世界を生きることになった。そこでは、「知能」と言う、狩猟採集時代にはもちろん中世ですらたいして重視されてこなかった能力によって人生の成功と失敗が大きく左右される。なぜなら、知識社会とはその定義上、知能の高い者がもっとも有利になる社会だからだ。差別の根源は、一般知能(言語運用能力と数学・論理能力)を端的に重視する現代社会そのものなのだ。これは、知能の格差を論じることを「差別」と言い立てる人たちこそが、知能に深く囚われていることを示している。

2021年2月20日土曜日

地頭力を鍛える 細谷功

 

フェルミ推定の第一人者である、細谷さんの書籍。非常に論理的かつ包括的にまとまっている良書でした。結局、フェルミ推定を通じて、以下の能力が鍛えられるから非常に頭脳の訓練には有効だという主張を述べています。

  • フレームワークを用いてモレなくダブりなく考える力
  • 対象とする課題の全体像を高所から俯瞰する全体俯瞰能力
  • 捉えた全体像を最適な切り口で切断し、断面をさらに分解する分解能力


フェルミ推定自体のフローは以下の流れになる。

  1. 全体→部分への視点移動
  2. 切断の「切り口」の選択
  3. 分類
  4. 因数分解
  5. ボトルネック思考

その際のアプローチ方法でこそ、地頭の差が如実にわかる点になる。
  • 地理的アプローチ=1m2あたりの電柱本数
  • 供給視点アプローチ=世帯あたりの電柱本数(供給側・需要側から考えるアプローチは訓練しないと意外と身につかない)

フェルミ推定を活用して抽象化思考力を鍛えられるか?>Yes
  • モデル化
  • 枝葉の切り捨て
  • アナロジー
仕事における能力を分解すると、以下の三次元に分解でき、Xの考える力は今後重要度が増していく。
  • X:考える力「地頭がいい」
  • Y:対人感性力「機転が利く」
  • Z:知識・記憶力「物知り」

では、その地頭力を定義して、分解するとどういった能力の集合体なのか?
  • 知的好奇心:これが全てのベースとなる
  • 論理的思考力:左脳による積み上げる思考のことを言う
  • 直感力:右脳による閃きとも言われる
  • 抽象化思考力(単純に考える)
    • 具体⇄抽象の往復
    • モデル化
    • アナロジー(類推)
      1. 抽象化する
      2. モデルを解く
      3. 再び具体化する
    • 枝葉の切り捨て
  • フレームワーク力(全体から考える)
    • 絶対座標と相対座標
      • 座標系=視座・視点(+視野)
    • ズームインの観点移動
    • MECE
    • 適切な切り口(軸)の設定
    1. 全体を俯瞰する
    2. 切り口を選択する
    3. 分類する
    4. 因数分解する
    5. 再度俯瞰してボトルネックを見つける
  • 仮設思考力(結論から考える)
    • ベクトルの逆転
    • 前提条件を決める
    • 「タイムボックス」アプローチ
    1. 仮説を立てる
    2. 立てた仮説を検証する
    3. 必要に応じて仮説を修正する


戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則


戦略PRに関する最新作です。
最近は日経クロストレンドにも寄稿している本田さんの書籍でした。

https://xtrend.nikkei.com/authors/19/00068/


  • 「買う理由」を創出しなければならない時代
  • 属性順位転換を起こすこと=「いいXX」を際定義すること

PRの役割とは、Publicity>Perception change>Behavior change


「関心テーマ」とは、以下の三つを繋ぐ、「架け橋」のようなものである。
  1. 商品やサービスが提供する機能、既存品や競合との差別化ポイント(Product benefit)
  2. 世の中の第三者が気になっていること、世間の話題(世の中の関心事)
  3. 商品やサービスを使う人が抱えている問題、その解決(生活者の関心事とメリット)

社会関心は顕在度と関与度の二軸で分解する

戦略PRの6つの構成要素
  • 社会性の担保(=social grid): 「社会インサイトの見極め」と「ソリューションの有限実行」
  • 偶然性の演出:
  • 信頼性の確保:
  • 普遍性の視座:
  • 当事者性の醸成:
  • 機知性の発揮:


2021年2月15日月曜日

データ・ドリブンマーケティング マーク・ジェフリー

本書はノースウェスタン大学院教授のマーク・ジェフリーが書いた書籍です。Amazon社内でも使用されていることから注目が集まった書籍です。デジマ最前線にいる方の戦術的な話ではなく、大企業においてどうやってデータドリブンなマーケティング戦略を立案して実行するかに焦点が置かれています。

マーケティングは態度変容モデルや購買ファネルなど名前は変われども、購買にまで至る認識や行動に影響を与える事象に過ぎない。それゆえ、ファネルに沿って計測可能な指標を適切に設定することが、経営を行う上で重要である。補足をすると、筆者はキャプランとノートンによるバランス・スコアカード経営が背景にあり、なんの指標を計測することがマーケティング活動の効果を示すかを考え抜くべき主張になる。この背後には、バランススコアカード経営(キャプランとノートンによる経営管理手法の一つ)の考え方がある。さらに、思想としては「クリエイティビティはコモデティ化しており、多くの企業が同レベルのクリエイティビティへのアクセスが可能であり、社外に外注している点からも、クリエイティビティは持続可能な競争優位にはなり得ない。組織プロセス、そのプロセスをサポートするテクノロジーの活用の仕方がマーケティング組織の差を生み出し、それこそが企業の競走優位になり得るのだ」といった思想です。


マーケティング・キャンペーン・マネジメント(MCM)の組織能力とは、以下で決まります。

  1. キャンペーンの選択
  2. ポートフォリオ最適化
  3. モニタリング
  4. 適応学習

そして、それを実現するする為に、

戦略的指標=将来/戦術的指標=過去/運用上指標=内部プロセス管理

といった指標を適切に管理することが求められています。


筆者はマーケテイング予算配分に着目し、以下に分類しました。

  1. 市場形成
  2. ブランディング
  3. カスタマー・リレーション・マネジメント(カスタマー・エクイティ)
  4. 需要創出
  5. ITインフラ・組織能力


「不況期の企業が取る戦略において、マーケティング投資を増加した企業は業績が良く、かつ、マグロウヒル・リサーチ社によると上位企業群のマーケティングはBrandingやCustomer equity(CMR)、インフラ投資の予算が厚く、受容喚起への投資割合は少ない事実が産業に関わらず観測されている。ゆえに、優れた事業戦略及びマーケティングとは、事業モデルにあった業務プロセスのことである。」というのが主な主張になります。そして以下の15の指標は、マーケテイングに関わる人にとって必須の指標だと提示していきます。

  1. 認知指標
    • ブランド認知=商品やサービスの想起
    • Ajile marketingにすることによって、効果を計測できる
  2. 比較検討・評価指標
    • お試し(試乗)=購入前の顧客による商品のお試し使用
    • 商品やサービスの顧客提供価値を明確に伝え、商品のメリットとコスト(価格)のトレードオフを提示する
      • よって、欠点は比較検討プロセスと実際の購買に時間差がある点と実際の購買と紐づけることが難しい点
      • それゆえ、将来の売上につながる先行指標を測定するべきである
    • 比較評価マーケティイングにおける必須の指標
  3. ロイヤルティ指標
    • ロイヤルティ指標=解約率(離反率)
    • 既存顧客の中で、商品やサービスの購買を中止する人の割合
  4. 顧客満足度(Customer satisfaction; CSAT)
    • 顧客満足度=「知人にこのサービスを勧めたいと思いますか?(Net promoter score)」「あなたは満足していますか?」という質問を通じて測定される指標
      • 学術的に論争があり、どちらの問いで計測すべきかの結論は出ていない
    • Brandingと顧客ロイヤルティを結びつける
    • NPS(net promoter score)はBainが一時期推していた経営指標
  5. 運用効率指標
    • オファー応諾率=マーケティング上のオファーに応じる顧客の比率
    • 戦術レベル(How)の観点で評価する指標
      • それゆえ、需要喚起型マーケティングで使用されることが多い
      • 業務運用上において、非常に重要
  6. 利益=売上高ー費用
  7. NPV=正味現在価値
    • PV-Cost
  8. IRR=内部収益率
    • キャンペーンや施策を実施する場合の投資利回り(複利)
    • この時のRは同業の類似企業
  9. 投資回収期間
  10. 顧客価値指標(Customer life time value)
    • CLTV= - AC + Σ(Mn-Cn)*Pn/(1+R)n (ここでのPnは当該顧客がその年に取引を継続する確率。Cを継続率とおくと、P=1-c)
    • 当該顧客の正味現在価値(NPV)を示していることになる
  11. CPC (cost per click) vs. COM (cost per impression)
    • 行動ベースで課金するモデルの開発が、Googleの広告ビジネスにおけるゲームチェンジになった
  12. TCR (transaction conversion rate)
    • 広告をクリックして、ウェブサイトに遷移したユーザーが商品を購入した割合
  13. ROAS
    • 広告費用対効果=収益/費用
  14. 直帰率
    • 滞在時間5秒未満で離脱してしまうUserの割合
    • ウェブサイトの効果を計測する
  15. WOM (word of mouth)

データマイニングの三種の神器
  • 決定木分析
  • クラスター分析
  • ニュートラルネットワーク


需要喚起型マーケティングは、販売金額と数量の両方を向上させることで、売上に寄与する。それゆえ、トライアル段階においては、リード・コンバーージョン(見込み客の顧客化)に注力するのが現場レベルでは正しい解になる。
 
ROMI(Return on marketing investment)と呼ばれる指標は、以下の施策を行う際に非常に重要である。
  • トライアルマーケティング
  • 受容喚起型マーケティング
  • 新製品マーケティング



Hooked: How to Build Habit-Forming Products

This book was written almost 10 years ago. Yet it still prevailed his concepts well implemented into a lot of successful products. Based on ...