大和不動産鑑定株式会社が出している書籍。これは結構勉強になった。あとは、モデリングを自分で組めるようになれば、一通りの計算は完結できるようになりそう。
- 不動産市場サイクル
- 不動産市場のサイクルは、同じ価格水準や市況のまま安定して5年間続いたことがない。不動産投資は市場のサイクルにうまく乗るかどうかにかかっている。
- 不動産価格評価手法
- 費用性:原価法
- 同じ不動産をつくるのにいくらかかるかを算出し、そこから時の経過にともなって発生する減価額を控除することによって不動産の価格を求める。
- 積算価格=再調達額-減価額
- 土地の場合は、一般に取引される造成済みの既成市街地の土地に原価法を適用することは通常なく、取引事例法を使用することが多い
- 原価修正に関しては
- 耐用年数に基づく方法:会計処理の減価償却の計算方法と似ている。経過した年数に応じて機械的に減価額を把握する
- 観察減価法:不動産を実際に見て、修繕更新の状況や管理の状況を踏まえて適切に減価する
- 市場性:取引事例比較法
- 事情補正
- 時点修正
- 地域要因の比較
- 個別的要因の比較
- 比準価格=取引価格X事情補正X時点修正X地域要因の比較X個別要因の比較
- 床単価を算出して他の手法で算出した価格の妥当性を県書することは実務的に実施されている
- 収益性:収益還元法
- 直接還元法:不動産を永久に保有した場合に、将来にわたって生み出されるであろう毎年の純収益を現在価値に割引、合計額を算出して不動産の価格を求める手法
- DCF法:一定期間の純収益および復帰価格の現在価値の総和を求める手法(このメリットは直接還元法よりも計算過程が詳細であり、現時点から数年間は毎年の純収益を分析できる)
- 還元利回りに関しては、想定した純収益とセットで考えないと数字だけが独り歩きする。マーケットが過熱しているときは、高い賃料水準と低い還元利回りで評価されるが、賃貸市場サイクルで賃料が下落局面になることも想定しなければいけない。
- 主な収入
- 貸室賃料収入
- 共益費収入
- 水道光熱費
- 駐車場収入
- その他収入(看板、アンテナの設置によって得られる収入、住宅系の礼金や更新料、店舗の権利金など)
- 主な費用
- 維持管理費
- 水道光熱費
- 修繕費
- プロパティマネジメントフィー(建物を管理するにあたり、管理会社に払う費用)
- テナント募集費用(新規テナントの募集に必要な仲介手数料や既存テナント更新に当たって必要となる費用)
- 公租公課(土地、建物および償却資産の所有者などに課される固定資産税、都市計画税)
- 損害保険料
- その他費用(借地で必要となる地代、看板などが道路に突出した場合に行政に支払う道路占用使用料)
- その他
- 一時金の運用(敷金、保証金などの預り金から得られる運用益)
- 資本的支出(建物の価値や耐用年数を延ばすような大規模な修繕に対応する支出)
- オフィスビル
- オフィスビルの収入は、貸室賃料収入、共益費収入、水道光熱費収入、駐車場収入、その他収入
- そのうち、賃室賃料収入の見積=ビルの賃料設定が評価額に大きな影響を与える
- 住宅
- 住宅の種類は戸建て住宅、分譲マンション、賃貸マンションなど多様に渡る。サラリーマン向けの投資用マンションはほぼ中古の区分所有マンションになるケースが多い
- 賃貸マンションの収益価格を算出するに当たっては、収支の査定と共に礼金、敷金、更新料などの一時金の性質と評価上の取り扱いを理解する必要がある
- 投資対象としては、人口の増加が見込まれるエリア、ワンルームの賃貸需要が多いエリア、インフラ西部が進むエリア、機関投資家が好むエリアにある物件が望ましい
- 住宅の評価
- 戸建て住宅:費用性を重視した積算価格と市場性を重視した比準価格を主に用いる
- 国土交通省の「既存戸建て住宅の評価に関する留意事項」を参照しつつ、リフォームされた部分や維持管理の程度を念入りに観察すること
- 分譲マンション:費用性を重視した積算価格と市場性を重視した比準価格を主に用いるが、築年数が古いマンションだと積算価格法は不適切である
- 賃貸マンション:キャッシュフローがどれくらいか、投資期間が終わったときの転売価格はどれくらいかを重視して決める。
- 賃貸マンションの収入
- レントロール(賃料一覧表)、プロパティマネジメントレポート、賃貸借契約書などに基づいて稼働率と各部屋の賃料や単価を確認する
- 入居者の属性や直近の成約賃料、敷金、礼金といった一時金の収受状況やフリーレントの有無に関しても確認
- 共済費収入が区別されているか、確認する
- 水道光熱費収入
- 駐車場収入
- 空室等損失:空室期間は2~3カ月程度は発生するもの
- 貸した倒れ損失:入居者の家賃滞納で、賃料回収が困難になった場合の損失を見積もる
- 一時金運用益:これは敷金の運用方法によって決まる
- 賃貸マンションの費用
- 維持管理費:共有部の清掃やエレベーターの維持管理、法定消防点検、受水槽の点検など建物管理にかかる費用。目安は共益費込み貸室賃料収入の3~5%、賃貸可能床面積1坪当たり月額300~500円
- 水道光熱費:共益費込み賃室賃料収入の1~3%、賃貸可能床面積1坪当たり月額100~300円
- 修繕費:通常の維持管理に必要な修繕費と賃借人の退去時に必要となる原状回復費に分けられる。
- 修繕費は、会計上費用として計上が可能。共益費込み賃室賃料収入の1~3%程度、賃貸可能床面積1坪当たり月額100~300円。
- 原状回復費は、クロスの張替えや床の張替え、エアコンクリーニング費用など。賃貸可能床面積1坪当たり15,000円が目安。このうち、オーナーの負担割合は50~60%程度になることが多い。
- プロパティマネジメントフィー:賃料の集金、滞納の最速、入退去手続、募集、騎乗の受付、リフォームの手配など、入居者の管理にかかる費用
- 賃料の回収や設備管理、保守点検を行う管理会社の管理・監督に関わる費用を計上し、ビルメンテナンスは維持管理費、コンストラクションマネジメントは資本的支出、リーシングマネジメントはテナント募集費用として計上するのが一般的である
- だいたい賃料収入の3~5%が目安である
- テナント募集費用:新規テナント募集の仲介業務や広告宣伝、契約更新時の更新事務にかかる費用。成約賃料の2~3カ月分が目安。内訳は仲介手数料が賃料の1カ月、宣伝広告費が賃料の1~2カ月分。更新事務手数料の目安は更新賃料の50%。
- 公租公課:固定資産税と都市計画税がある。固定資産税は償却資産も対象になる。(何もてがかりがない場合は各法務局が公表している「新知己建物課税標準価格認定基準表」を基に査定した価格に、総務省が公表している「経年減点補正率基準表」に基づき、経年による補正を行い課税標準を想定して算出する)
- 損害保険料:火災保険、利益保険、施設賠償保険など。再調達価格の0.015~0.030%が目安
- その他の費用:借地の場合の支払い地代、袖看板などの道路占有使用料、区分所有の場合は組合管理費、敷地外駐車場を借りている場合は使用料、町内会費などがある
- 資本的支出:共益費込み賃室賃料収入の1~5%、賃貸可能床面積1坪当たり月額100~500円が目安になる。CMフィーの目安は工事価格の1~3%程度になる。全体的な経費率の目安は15~25%になる。
- 還元利回りの査定:これまで算出した純収益を還元利回りで割り戻したものが直接還元法による収益価格になる
- だいたい東京都心部で4~5%が目安になる。このエリアの利回りに、築年スプレッド(0~10年は0.1%、10~20年は0.2~0.3%が目安)、借地(流動性が劣ることを考慮し、+0.1%以上)などの要因を考慮して決める
- 一時金の評価上の取り扱い
- 敷金・保証金:実際には敷金の一部を返還しない特約(敷引特約)を結ぶ場合がある
- 収益還元法での運用益を含める場合は、(あ)全額を返還準備金として預託することを想定して運用益を発生時に計上する方法、(い)全額を受け渡し時の収入または支出として計上する方法がある。実際は(あ)が実務上では広く採用されている。
- 礼金・権利金
- 更新料:通常は新規賃料の1~2カ月分として設定することが多く、賃貸借契約書において更新料条項が記載されている
- 商業施設
- 商業施設の賃料形態:固定賃料、歩合賃料、最低保証料+超過歩合賃料
- 賃料負担率=粗利利益率X不動産特有経費率
- ホテル
- 労働集約型事業である
- 重要な指標
- ADR(average daily rate):稼働客室数当たりの平均客単価
- OCC (occupancy rate):客室の稼働状況を表す指標
- Dbl-OOC(double occupancy rate):客室数当たりの平均宿泊客数、「総宿泊客数÷販売可能客室数」
- Rev PAR(Revenue per available room):販売可能客室数当たりの平均客単価、「総客室売上高÷販売可能客室数」=「平均稼働客室単価(ADR)X客室稼働率(OCC)」
- GOP(gross operating profit):売上高から売上原価や営業経費を控除した償却前営業利益。営業総利益。運営の成果を示す重要な経営指標。
- ヘルスケアアセット
- 物流施設
- インフラ
- ゴルフ場
- ゴルフ場は一般の建物と異なり、建築年数が経つにつれて、価値が高くなるのが通常である
- ゴルフ場の評価:オペレーショナルアセットであり、他のアセットと異なり家賃相場もないので、ゴルフ事業収入に基づくインカムアプローチが基本である
- 一般的にメンバーの来場者割合が30%を超えるとプレー収入に影響が出始めて経営が苦しくなり、プレー収入の落ち込み分をカバーできるだけの年会費収入が得られないと経営が成り立たなくなる
- 費用に関して、割合が大きいのが人件費、次に巨額な固定資産税になる。また、地代があるかないかでゴルフ場運営収支に大きく影響を与える
- 還元利回り:オフィスや住宅、商業施設は総収益に対する経費率が30%程度に収まっているのに対して、ゴルフ場の経費は固定的要素が強く、経費率が70%以上と高いことがほとんど。
- レントロール
- プロパティマネジメントレポート
- 賃貸借契約書