2021年2月21日日曜日

もっと言ってはいけない 橘玲

現代の遺伝学が明らかにしつつあるのは、「どんなに努力してもどうしようもないことがある」という現実である。そして、リベラルな社会になればなるほど、それが剥き出しに現れる。それを様々なFactを用いながら、現代の大衆メディアに支配されている言論に一石を投じる内容になっている。個人的には、肌感覚と合っている。日本の労働社会がグローバル化しない本質は、グローバル化が進むことで多くの人(労働者)が不幸になることを直感的にわかっている点と自己社畜されることで幸福を感じる遺伝子によって不合理を受け入れる民族である点が絡まっているからだろう。複雑怪奇な労働環境もほぼこれで説明ができる。



行動遺伝学によると、一般知能(IQ)の遺伝率は77%で極めて高い。

リベラルな社会では、「個人の努力ではどうしようもないもの(運命)」を理由にした差別は許されない。これは人種だけでなく、民族・国籍・身分・出自・性別・性的嗜好・障害なども同じである。

アイデンティティは「社会的な私」の核心にあるものd、徹底的に社会的な動物であるヒトにとって、それを否定されることは身体的な攻撃と同じ恐怖や痛みをもたらす。人類が進化の大半を過ごした旧石器時代の狩猟採集生活では、集団(仲間)から排除されることは直ちに「死」を意味した。自己は社会=共同体に埋め込まれているのだ。〜中略〜世界を「俺たち(善)」と「奴ら(悪)」に分割し、善悪二元論で理解しようとするのは、それが一番わかりやすいからだ。

世界を複雑なものとして受け入れることや、自分が「悪」で相手が「善」かもしれない可能性を疑うことは、この単純な世界観を激しく同様させる。それは、陳腐で平板な世界でしか生きられない人たちにとってものすごく不安なことなのだろう。現代社会を蝕む病は、脆弱なアイデンティティしかもてなくなった人たちがますます増えていることだ。彼らは名目上はマジョリティだが実体は「社会的弱者」で、だからこそ自分より弱いマイノリティに激しい憎悪を向ける。

知識社会とは、その定義上、高い知能をもつ物が社会的・経済的に成功する社会のことだ。そう考えれば、知識社会における経済格差とは「知能の格差」の別の名前でしかない。「知能」の問題から目を背けて、私たちがどのような世界に生きているのかを理解することはできない。

ヒトの脳は、直感的には因果律しか理解できないように作られているため、あらゆる出来事に無意識のうちに原因と結果の関係を探す。これが、自分にとって不愉快な統計的事実を定義と混同死、それを否定するために経験的事実を「ブラックスワン」として持ち出すいちばんの理由である。

私(人格)=遺伝+環境(共有環境-非共有環境[友達関係])

ノルウェーの双子データによると、環境で47%が決まり、遺伝的理由で41%が決まってしまう。


ヘックマンが明らかにしたのは、「0~5歳までの教育投資が重要である」ということであり、認知的スキルは11歳ごろに基盤が決まる点であった。なぜなら、年齢が上がるほど遺伝子による差異が目立つため、どれだけ教育に投資しても効果は薄れてしまうからである。

米国社会におけるアジア系移民の成功を、トマス・ソ・ウェルという黒人経済学者は「日系米国人の経済的成功は、"特別扱い"されなかったからだ」と述べた。

Quiet(ものしずか)の中で、スーザン・ケインはこう述べている。内向性の時代において、50%は遺伝率で決まり、残りの半分は非共有環境(=友達関係)で決まる。

他人の道徳的不正を罰することで快感を覚えるように脳をプログラムしておけば、共同体の全員が「道徳警察」になって相互監視することで秩序維持に必要なコストは劇的にさがる

狩猟採取生活は、人口密度の高い集団生活を余儀なくされた。つまりは、感染症のリスクが高まり、結果として免疫機能の発達につながった。炭水化物を大量摂取しても糖尿病になりにくい体質へと進化した。

ラクトース(乳糖)は元々人間が摂取する成分ではなかった。これは、西アフリカ、ヨーロッパでの牧畜文化から摂取するようになった。それによって、わずか数千年で乳糖不耐性タイプでない人も生まれたのだ。

遺伝が極めて複雑な相互作用で、自然環境ではなく、社会環境との相互作用も含まれるため、現代人とは、遺伝と文化の「共進化」の産物である。

Race Differences in Inteligence(リチャード・リン)によると、PIAAC/PISAでの試験で計測される知能は北東アジアがスコアが高く、SG>香港>中国>韓国>日本>台湾の順位である。

シリコンバレーのベンチャー企業の創業者・経営幹部にアシュケナージが多い。次に目立つのが、インドのバラモン出身(インドの中で極めて知能の高い集団)である。

ネオフォリア(新奇好み)は、リベラルになりやすい。ネオフォビア(新奇嫌い)は、保守派になりやすい。

日本人の下戸は23.9%であり、本州中部に多い。

環境の影響が大くなれば遺伝率は下がり、逆に環境の影響が小さくなれば遺伝立は上がる。つまり、「リベラルな社会ほど遺伝立が上がる」という単純な事実である。だとすれば、「リベラル」な人たちこどが、環境のちがいで人生が決まることのない遺伝率100%の理想世界を目指さなくてはならない。

産業革命以降、私たちは「知識社会」という人類がこれまで体験したことのない全く新しい世界を生きることになった。そこでは、「知能」と言う、狩猟採集時代にはもちろん中世ですらたいして重視されてこなかった能力によって人生の成功と失敗が大きく左右される。なぜなら、知識社会とはその定義上、知能の高い者がもっとも有利になる社会だからだ。差別の根源は、一般知能(言語運用能力と数学・論理能力)を端的に重視する現代社会そのものなのだ。これは、知能の格差を論じることを「差別」と言い立てる人たちこそが、知能に深く囚われていることを示している。

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