2021年2月15日月曜日

データ・ドリブンマーケティング マーク・ジェフリー

本書はノースウェスタン大学院教授のマーク・ジェフリーが書いた書籍です。Amazon社内でも使用されていることから注目が集まった書籍です。デジマ最前線にいる方の戦術的な話ではなく、大企業においてどうやってデータドリブンなマーケティング戦略を立案して実行するかに焦点が置かれています。

マーケティングは態度変容モデルや購買ファネルなど名前は変われども、購買にまで至る認識や行動に影響を与える事象に過ぎない。それゆえ、ファネルに沿って計測可能な指標を適切に設定することが、経営を行う上で重要である。補足をすると、筆者はキャプランとノートンによるバランス・スコアカード経営が背景にあり、なんの指標を計測することがマーケティング活動の効果を示すかを考え抜くべき主張になる。この背後には、バランススコアカード経営(キャプランとノートンによる経営管理手法の一つ)の考え方がある。さらに、思想としては「クリエイティビティはコモデティ化しており、多くの企業が同レベルのクリエイティビティへのアクセスが可能であり、社外に外注している点からも、クリエイティビティは持続可能な競争優位にはなり得ない。組織プロセス、そのプロセスをサポートするテクノロジーの活用の仕方がマーケティング組織の差を生み出し、それこそが企業の競走優位になり得るのだ」といった思想です。


マーケティング・キャンペーン・マネジメント(MCM)の組織能力とは、以下で決まります。

  1. キャンペーンの選択
  2. ポートフォリオ最適化
  3. モニタリング
  4. 適応学習

そして、それを実現するする為に、

戦略的指標=将来/戦術的指標=過去/運用上指標=内部プロセス管理

といった指標を適切に管理することが求められています。


筆者はマーケテイング予算配分に着目し、以下に分類しました。

  1. 市場形成
  2. ブランディング
  3. カスタマー・リレーション・マネジメント(カスタマー・エクイティ)
  4. 需要創出
  5. ITインフラ・組織能力


「不況期の企業が取る戦略において、マーケティング投資を増加した企業は業績が良く、かつ、マグロウヒル・リサーチ社によると上位企業群のマーケティングはBrandingやCustomer equity(CMR)、インフラ投資の予算が厚く、受容喚起への投資割合は少ない事実が産業に関わらず観測されている。ゆえに、優れた事業戦略及びマーケティングとは、事業モデルにあった業務プロセスのことである。」というのが主な主張になります。そして以下の15の指標は、マーケテイングに関わる人にとって必須の指標だと提示していきます。

  1. 認知指標
    • ブランド認知=商品やサービスの想起
    • Ajile marketingにすることによって、効果を計測できる
  2. 比較検討・評価指標
    • お試し(試乗)=購入前の顧客による商品のお試し使用
    • 商品やサービスの顧客提供価値を明確に伝え、商品のメリットとコスト(価格)のトレードオフを提示する
      • よって、欠点は比較検討プロセスと実際の購買に時間差がある点と実際の購買と紐づけることが難しい点
      • それゆえ、将来の売上につながる先行指標を測定するべきである
    • 比較評価マーケティイングにおける必須の指標
  3. ロイヤルティ指標
    • ロイヤルティ指標=解約率(離反率)
    • 既存顧客の中で、商品やサービスの購買を中止する人の割合
  4. 顧客満足度(Customer satisfaction; CSAT)
    • 顧客満足度=「知人にこのサービスを勧めたいと思いますか?(Net promoter score)」「あなたは満足していますか?」という質問を通じて測定される指標
      • 学術的に論争があり、どちらの問いで計測すべきかの結論は出ていない
    • Brandingと顧客ロイヤルティを結びつける
    • NPS(net promoter score)はBainが一時期推していた経営指標
  5. 運用効率指標
    • オファー応諾率=マーケティング上のオファーに応じる顧客の比率
    • 戦術レベル(How)の観点で評価する指標
      • それゆえ、需要喚起型マーケティングで使用されることが多い
      • 業務運用上において、非常に重要
  6. 利益=売上高ー費用
  7. NPV=正味現在価値
    • PV-Cost
  8. IRR=内部収益率
    • キャンペーンや施策を実施する場合の投資利回り(複利)
    • この時のRは同業の類似企業
  9. 投資回収期間
  10. 顧客価値指標(Customer life time value)
    • CLTV= - AC + Σ(Mn-Cn)*Pn/(1+R)n (ここでのPnは当該顧客がその年に取引を継続する確率。Cを継続率とおくと、P=1-c)
    • 当該顧客の正味現在価値(NPV)を示していることになる
  11. CPC (cost per click) vs. COM (cost per impression)
    • 行動ベースで課金するモデルの開発が、Googleの広告ビジネスにおけるゲームチェンジになった
  12. TCR (transaction conversion rate)
    • 広告をクリックして、ウェブサイトに遷移したユーザーが商品を購入した割合
  13. ROAS
    • 広告費用対効果=収益/費用
  14. 直帰率
    • 滞在時間5秒未満で離脱してしまうUserの割合
    • ウェブサイトの効果を計測する
  15. WOM (word of mouth)

データマイニングの三種の神器
  • 決定木分析
  • クラスター分析
  • ニュートラルネットワーク


需要喚起型マーケティングは、販売金額と数量の両方を向上させることで、売上に寄与する。それゆえ、トライアル段階においては、リード・コンバーージョン(見込み客の顧客化)に注力するのが現場レベルでは正しい解になる。
 
ROMI(Return on marketing investment)と呼ばれる指標は、以下の施策を行う際に非常に重要である。
  • トライアルマーケティング
  • 受容喚起型マーケティング
  • 新製品マーケティング



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