2010年代以降は完全にIT業界の時代に変遷してしまったが、製造業が華の時代だった2000年代にイノベーションを中心に企業変革を行った伝説の経営者の自書伝になる。勝手な見解だけれども、米国企業を中心とした株式市場から優良企業と見なされる会社は、システムが圧倒的に優れている。もちろん社長は従業員に対しては「我が社は人財が大事だ」と他の会社と同じようにメッセージを発するが、この組織形態の実態はO-TSR(事業総株主利益(O-TSR))と呼ばれる指標を基に組織が構成され、それに相応しい人材を各役職に当てはめるのが正しい認識だと思っている。こうした組織編制をイノベーションを中心に置いて、会社の業績をどう改善したかを実例と共に解説したのが本書になっている。なお、A.G.ラフリーの名著はPlaying to Win: How Strategy Really worksなので、こちらも併せてどうぞ。
A.G.ラフリーがP&Gで行った実績は以下である。
- すべての中心に消費者を置く
- 外に開かれたオープンな開発モデルにする(Connect & Development)
- M&Aに依存せずに持続可能な内部成長を遂げることを優先する
- 持続可能な内部成長を遂げるためにイノベーション中心の組織をつくる
- イノベーションを新たな視線で考える
- 目的と価値観の動機付け
- 背伸びすれば手の届く目標
- 選択肢のある戦略
- 他社にはない強み
- 実現する組織
- 一貫性のある信頼できるシステム
- 勇気にあふれる人とつながりのある文化
- 人を奮い立たせるリーダーシップ
消費者がボス:成功するイノベーションの基盤
- 潜在的ニーズと顕在的ニーズ
- 偉大なイノベーションは未対応のニーズやウォンツを理解することから生まれる
- 消費者が今手に入れているもの(競争相手の商品、サービス・あるいは自社の商品、サービス)と彼らが望むものとのあいだにはどれくらいのGapがあるのか?
- 低所得者市場は、価格そのものより、値ごろ感がはるかに大事である
- 未対応の消費者ニーズに応えるべき。なぜなら、本当に欲しいものは消費者はひょうげんできないから。
- whoのセグメンテーションが正確なイノベーションをもらたす
- 誰のセグメンテーションはイノベーションに不可欠。しかし、それに基づく何らかの行動が取れて初めて価値を持つ。
- 市場のダイナミックス
- 消費者トレンド
- 会社として付加価値を加えられる分野
- 広義の誰の中で、あなたのイノベーションをもっとも評価しれくれ、主要ターゲットとなるサブグループは誰かを特定し、サブグループ管で優先順位をつけられるか?
- 一度しか購入したことのないユーザー、あるいは、ときどき購入するユーザーを、もっと頻繁に購入し利用する愛用者に変えることができるか?
- なぜある消費者はあなたの商品やサービスを一度使ったきり、二度と買わないのか?
- もっと消費者志向の事業にするには何が必要か?
- どこで戦い、どのように勝つか?:イノベーション達成に目的と戦略が果たす役割
- 当時のP&Gが実施したこと
- P&Gの主力事業を伸ばすことに集中する
- より速い成長、より高い利益、より資産効率のよいポートフォリオに変える
- 急成長を遂げる新興市場で低所得の消費者を獲得する
- 破壊的イノベーションと持続的イノベーション
- まったく新しい消費者の形をつくりだし、既存市場を変えてしまう
- 消費者の価値を高める(新たな機能、新たなバージョン、新たなサイズ)
- これは通常の戦略ポートフォリオアプローチでは事業ポートフォリオのなかで魅力ある領域とその期待成長率を分析する。これでは、事業領域そのものを持続的イノベーションが変えられるという点を考慮していないから
- もっと得意とするところを十分に活用する:強みをイノベーションで再活性化する
- 持続可能な競合優位性をもたらす強みをだらだらと長いリストで書くのではなく、いくつか選び出す毅然とした態度をとれるか?
- 現状の強みを組み合わせて、成長の新たな機会を作り出したり、競争相手を出し抜いたり、市場のゲームを変えることができるのか?
· イノベーションを実現する
- イノベーションのための組織をつくる:イノベーションを可能にする枠組みをつくる
- 組織形態をデザインし、選択するときに考慮すべきポイント
- イノベーションの機会は、主力事業にあるのか、主力事業の周辺にあるのか、あるいはまったく新規の事業なのか
- リスク、チャンスのレベルと投資のレベル
- イノベーションの機会が会社の強みをテコに利用する度合い、あるいは、新たな能力や強みをつくり、育てる必要があるのかどうか
- イノベーション開発の時間軸
- イノベーション開発チームに必要とされる経験と専門性の種類
- イノベーションの開発段階はコンセプトや試作品をつくる段階、開発、検証、商品化のいずれの段階にあるのか
- イノベーションを日常業務に取り込む:アイディアの創出から市場展開まで
- イノベーションレビューの要素
- イノベーションポートフォリオはどれくらいしっかりしているか
- 主要な競争相手と比べてイノベーション計画はどれだけ強固か?
- イノベーション・プログラムは損益、収益率にどの程度プラスとなるか?
- 事業戦略・計画を定期的に減価国行っているか?イノベーション戦略は事業戦略と連動しているか?
- ニーズは詳細に、明確に定義されているか?その結果、焦点を絞って内外からアイディアを探せるしくみができているか?ニーズに優先順位がつけられているか?
- イノベーションのリスクを管理する
- 顧客を知る
- 試作品をつくる
- 厳格な消費者テストをする
- イノベーション・プロジェクトのポートフォリオを管理する
- 事業計画や業績目標を達成するのに十分な数のプロジェクトがあるか?あるいは不足しているか?
- ポートフォリオにあるプロジェクトは短期、長期、リスクの高低のバランスが取れているか
- コントロールできない外部要因
- ブレイックスルーがうまくいかない(言い換えれば、会社が勝利を収めるのは、新たな技術開発とコスト効率の良い生産工程が同時に実現した時だけ)
- 競争相手がアイディアを盗む
- 広く浅くの過ちを犯していないか。
- 実験にあたって偏見をもたない
- 致命的な問題を早期に発見する
- 過去から学ぶ
- 評価指標をつかってイノベーションを評価する
イノベーション文化
- イノベーションは団体競技だ
- Courageous
- Connect
- Corporative
- Curious
- Open
- P&G asia文化方針は当時評価されていた
- Inclusive:ゲームを変えるイノベーションを育てるのに必要な多様な考え方やアイデアの恩恵を享受する
- Decisive:組織のしがらみ、議論、過度の分析を排し、イノベーションの開発、認定、商品化をはやめる
- External:社外に目を向け、消費者、顧客、サプライヤーとの接触を密にする。競合相手と比較する、率直で客観的な評価基準が必要とされる
- Agile:消費者や市場環境の変化に迅速に反応し、先をみて考え、予測可能なリスクを躊躇なくとれるようにする
- Simple:イノベーションにもっと時間をつかえるように、仕事の枠組み、手順を合理化し、簡素化する努力を継続する
- リーダーの新たな仕事
- イノベーションリーダーに必須なスキル
- ひるまぬ勇気、統合嗜好、IQとEQのバランス
0 件のコメント:
コメントを投稿