全米で昔大ベストセラーになった一冊。著者は、ロングテール*を発見したことで有名な、クリス・アンダーソン。2009年出版なの9年近く経つが、現在のフリーを体系的にできる良書です。フリーを説明するために、行動経済学、心理学、マズローの欲求段階説、歴史、とあらゆる分野のアイデアを動員しています。
フリー[ペーパーバック版] 〈無料〉からお金を生みだす新戦略
- フリーのお話に入る前に、前提の説明
まず、21世紀はビット経済である。20世紀はアトム(原子)世界であったが、21世紀はビット(Bit)世界になるわけです。
アトム経済においては、私たちのまわりにあるたいていのものは、時間とともに価格が高くなる。一方、オンラインの世界であるビット経済においては、ものは安くなりつづける。アトム経済はインフレ状態だが、ビット経済においては、デフレ状態なのだ。つまり、以下のことが21世紀のデジタルの世界の特徴とも言えます。
もう、これが本書の要旨といってもいいでしょう。もはや、20世紀とはゲームが変わっているんですよね〜。いやー企業のみならず、ゆとり世代も混沌とした時代を生き抜かなければならないんです(笑)
- 競争市場では、価格は限界費用まで落ちる
- テクノロジー(情報処理能力、記憶容量、通信帯域幅)の限界費用は年々0に近づいている
ゆえに、「低い限界費用で複製、伝達できる情報は無料になりたがり、限界費用の高い情報は効果になりたがる」法則は避けらない。光ファイバーで拡大する帯域と「ムーアの法則」をもとに、より高性能かつ低康になるサーバが形成するネットワーク社会(=21世紀)は、これまで稀少だったものが豊富性を生み出し、新たな豊富性が次の時代を規定する稀少性を生むわけだ。
- アイディアからつくられるデジタル商材の開発コストも過激なまでに下がっている
20世紀、企業のあらゆる製品はコモディティ化されて、安くなっていき、企業は儲けを求めて、新しい稀少性を探した。潤沢にあるモノのコストが底値にまで下がるとき、その商品に隣接した別のモノの価値を押し上げることがある。クレイトン・クリステンセンによると、「魅力的利益保存の法則」と呼んだ。確かにちょっと考えるだけでも、スマホのケース、インスタグラムの加工アプリ、などいろいろありますね。。。
頭脳によって付加価値がつけられたものが最高収益を上げる時代になった。今日、稀少になったのは、「シンボリック・アナリスト」と元米国労働長官のロバート・ライシュが呼んだ、知能と技能と抽象思考をあわせ持つ有能な知的労働者だ。これは衝撃的一文ですね(笑)
はい、勉強頑張りますw
- フリーのビジネスモデル
- 直接的内部相互補助;無料サンプル等で何かを購入することを期待している
- 三者間市場・市場の"二面性";広告収入によって賄う/ある顧客グループが別の顧客グループの費用を賄う
- フリーミアム;一部の有料顧客が他の顧客の無料分を負担する(1, 時間制限/2, 機能制限/3, 人数制限/4, 顧客タイプによる制限)
- 非貨幣経済:贈与経済、無償の労働、不正コピー
行動経済学は、フリーに対する私たちの複雑な反応の多くを、「社会領域」における意思決定と「金銭領域」における意思決定に分けて説明する。しかし、現実の消費者は、金銭コストを計算できても、複雑すぎるが故に社会的コストを計算することは諦めて、サービスをそもそも教授しないのだ。要は、人間って頭良くないからそんないちいち理論的に考えられない、と。「あーなんか、めんどくさいなぁ」って思って、思考そのものを諦めるわけです。
フリーは最初から料金を請求していないため、価格という知覚を消費者に意識させない。金額はいくらでもかまわないが、お金を払うという行為が決断を示す行動である。値段がつくことで、我々は決断を迫られるからだ。それだけで、行動をやめさせる力を持つ。経済学者ニック・サボに言わせると「心理的取引コスト」と呼ぶ。ロナルド・コースの取引コストを購買決定行動まで拡大した理論だ。価格における「心理的取引コスト」という考え方、とても面白いです。
例えば、マッチングアプリなんか、デートへの心理的コストを減らすサービスを装備することが成功の鍵なのかもしれません。世界中で広がったマッチングアプリの代名詞、Tinderは「気軽にスワイプ」をテーマにしています。婚活市場にありがちな鼻息荒く異性を探す、つまりは、男がどの女の子がいいかの決断を真剣に迫られる、心理的取引コストを「第一印象のみで/ノリで決断する」ことに変換することで低くしているわけですね。
*ロングテール:売れ筋商品の棚からではなく、無限に続く商品棚からなんでも選べるようになったことで生まれた消費者の新しい需要
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